DDX3X関連神経発達異常症は、RNA代謝と神経細胞の発達に重要な役割を持つDDX3X遺伝子内の自然変異によって引き起こされる希少疾患である。 つまり、両親のどちらかが何をしたわけでもないにもかかわらず、子供が発症する可能性があるということである。 この症候群は2014年に米国で初めて発見され、X染色体上に位置するため主に女児に発症するが、男児にも発症した例がある。 現在のところ世界で診断が確認されているのは約1000人だが、女性の知的障害の1~3パーセントの原因であるとも報告されている。
DDX3X関連神経発達異常症は、しばしば自閉症スペクトラム障害、脳性麻痺、レット症候群、ダンディ・ウォーカー症候群、あるいは一般的な発達遅滞と誤診される。 DDX3X関連神経発達異常症は知的障害、発作、自閉症、筋緊張の低下、脳の異常、身体発達の遅れと関連している。 症状は個人差が大きく、ある程度の文章で話す能力を発達させる人もいれば、言葉を発しない人もいる。 走る、跳ぶ、踊ることができる人もいれば、歩けない人もいる。
DDX3X関連神経発達異常症の患者に見られる症状と発症割合は下表の通り1。
Feature | 特徴 | 割合 |
Hypotonia | 筋緊張低下 | 76% |
Hypertonia | 筋緊張亢進症 | 34% |
Gait disturbance/ movement disorder | 歩行障害/ 運動障害 | 66% |
Abnormal brain MRI | 脳MRIの異常 | 83% |
Microcephaly | 小頭症 | 29% |
Seizures | 発作 | 21% |
Scoliosis | 脊柱側湾症 | 15% |
Intellectual disability | 知的障害 | 97% |
DD(Developmental delay) | 発達遅延 | 99% |
ASD(Autism spectrum disorder) | 自閉スペクトラム症 | 27% |
ADHD(Attention deficit hyperactivity disorder) | 注意欠如・多動症 | 22% |
Sensory symptoms | 感覚症状 | 75% |
GAD(Generalized anxiety disorder) | 全般性不安障害 | 4% |
Ocular/vision abnormalities | 眼/視覚異常 | 41% |
Gastrointestinal abnormalities | 胃腸異常 | 83% |
Cardiac defect/defect | 心臓欠陥 | 16% |
Precocious puberty | 思春期早発症 | 12% |
Auditory abnormalities | 聴覚異常 | 8% |
Skin abnormalities | 皮膚の異常 | 31% |
Recurrent infections | 再発性感染症 | 48% |
Sleep disturbance | 睡眠障害 | 80% |
DDX3X Foundationの集計では世界で1100件以上の症例があるとされている2。女性の原因不明の知的障害者のうちの1~3%がDDX3X関連神経発達異常症に起因するとの報告もある3。
日本ではGENIEでのDDX3X関連神経発達異常症として登録されている症例は4~6名となっている4。
DDX3X関連神経発達異常症は小児慢性特定疾病の対象であり、医療費助成/自立支援あり。指定医による意見書をもらって自治体に申請。
DDX3X関連神経発達異常症はまだ指定難病には指定されてない。ただ現状でDDX3X関連神経発達異常症の治療法はなく療養は長期に渡ることから、指定難病となることがが望まれる。
厚生労働省による指定難病となる条件は下記となっている5。
DDX3X関連神経発達異常症は現状この6つの条件に該当していると考えられる事からも、指定難病となることが期待される。